あたし的コンプリート

エミール1エミール2なんのにおいなんだか鼻がきいて
ふと検索してみたら
あたしの一番好きな映画監督
エミール・クストリッツァの作品が
1月末から恵比寿で3週間もかかるという。
絶対見たい4本を厳選、
Tomに見せたいと思っていたので
もう1枚追加で300円引きの前売りを
5枚購入。
ところがこの前売りというのがあとでまさかの問題を引き起こし。
(というほどでもないケド)

まずは
1月のある月曜日
Tomさん深夜作業につき
ひとりで一本め、「SUPER8」をみた。
今回の作品群の中では唯一のドキュメンタリー。
映画の音楽を担当していて
クストリッツァ自身も所属するバンド
「ノースモーキングオーケストラ」のメンバーの
インタビュー、ライヴ映像なんかが中心なんだけど
揃いも揃ってはちゃめちゃ人生。
酒呑んで仲良く盛り上がってるかと思えば、
すぐに瓶を手に持ってケンカしたり。
だけど貧しくてもしかるべき音楽教育を受けていたり
一家が音楽家族だったりして
揃いも揃って演奏力がすごい。
とくにギタリストの二人が好きなフレーズを教えあってるシーン。
ゆっくり弾きはじめたかと思えば、こお?こお?
てな具合に習得していって
だんだんかみあってきてテンポをあげ
アドリブで会話しちゃう!みたいな場面は鳥肌もの。
こういう場面を見ると音楽やりたい!っていう気持ちと
自分には無理だーという絶望の気持ちと
両方の波がざばーんと押し寄せてきて
結局目をとじてやり過ごしてしまう。
それの繰り返し。

ちなみに
この「SUPER8」、Tomが観たことあるというので
絶対違うとよくよく聞いてみれば、
やはりSFの方だった。

しかし
シャレオツ恵比寿は居心地悪く
併設のカフェの商品以外は
持ち込み禁止だったので
持って行ったおにぎりも食べられず
帰宅してやっとビール。
映画の前の景気付けのビールは
危険なのでよかったのかもしれないが。
でも入れ替えじゃなかった昔には
飲んだり寝たりしながら
一日映画館にいることもできたのにね。
いろいろ不便に思う。

そして週末に
Tomを付き合わせ2本め「アンダーグラウンド」を。
サラエヴォ出身の監督がユーゴスラビアの混乱期を中心に描いた作品。
いくつもの民族が集まってくっついたりはなれたり
つついてくる周辺諸国との関係、
自分たちはナニジンなのか?
祖国はどこだ?
そんな状況の中
持ち続ける民族への愛と誇り、憎しみとあきらめ。
侵略の経験のないあたしたちには
想像もできない感情がたくさんあふれている
作品たちだけど、ささいな笑い、小さな欲望、邪心、
哀しみがもたらすものは、誰にだってある。
そんなことを思い起こさせるクストリッツァ作品が
好きなんだな、あたしは。
映画の終わりに拍手がおこったのは
はじめての体験だったけど、なんだかじんわりきた。
Tomも理解はできないけど
久しぶりにおもしろい映画を観た、と言っていたので
よかったかな。
観てない人に説明するのは難しいから、映画というものは。

そしてこの日は土曜の最終回ということもあったのか
席はほとんどうまっていたので
月曜日に観る分の席を予約して帰った。

でもってでかけた次の月曜日の最終回。
驚いた。
着いてみると、切符売りがいない。
代わりに貼り紙がしてあって
「次の上映、黒猫・白猫は完売しました」だと。
予約していたのでホント助かった。
土曜日も開始時刻には満席になって驚いたのだけど、
休日の最終回ならまあ。
・・と、思っていたのが甘かった。
デートで映画に行く、という若者が
意外と多いという話は聞いたことがあるけど
ロードショーだけじゃないんだね。

で、この日みた「黒猫白猫」は
意外と忘れている部分も多かったけど
みればみるほど、
すみっこにいる役者の顔、
猫に代表される動物の演技、
足こぎ発電や、空飛ぶ演出をする手造り小道具
(いや、舞台装置といえるほど大きいものも)
おかしくってたまらない。
お金がないからこうしてます、こういう時代だからこうしてます、
のはずなんだけど、かえって発想の豊かさや、
手造りの技術力の高さが際立つ。
これもクストリッツァ作品のおもしろいところ。

あとは常に効果的な音楽。
ジプシーの悲哀に満ちているかと思えば
毎度おなじみの結婚式の騒ぎで流れるような
軽快で、映画館の椅子にすわっていてさえ
体が動いてしまう、それ。
ジャンルを超えてすべての人に
何かしらの印象を与える音楽、そういうもののような気がする。
ノースモーキングオーケストラ、何度か来日しているんだよな。
いつかライヴにも行ってみたいのだ。

さて
ここまで観終わって
どうしても観たいあと1本は
あと1回しかかからない。
いまどきの映画館らしくネット予約もできるのだけど
ケチって前売りを買ってしまったあたしは
窓口でしか予約ができないんだと。
しかも席の予約は3日前から!
電車賃がかかってまうやん!
前売り使えねぇっ。

それでもずいぶん待った映画だからしょうがない。
予約できる日にでかけて行くことに。
でもそれだったら一本観よう。
と、予定外の「ジプシーのとき」を、前売りで。
で、残り一本の「ライフイズミラクル」を
ネット予約した。
これで安心。

「ジプシー」は
かなりの回数かかってるせいか
わりとすいていた。
もう恵比寿にも慣れたので、ロビーでおにぎり食べるなんてことも平気。
170分の大作、あきもせず、腹もへらず、トイレももよおさず、楽しめた。
何といっても「黒猫白猫」にもでていた
おばあさんの顔が最高にいいんだな。
たぶんしろうともたくさん出ているのだけど
それがたぶん監督の世界観をリアルに表現するのに
一役かってる。

そしてついに
2月の2週目月曜日に
Tomも深夜作業だし、最後の一本
「ライフイズミラクル」でコンプリート。
たしか最初に観たクストリッツァ作品で
これにやられたんだけど
今みるとちょっとファンタジーすぎる部分もあり。
でも出てくる人たちが皆、粗野でどうしようもなくて
感情で動きすぎるんだけど、
やさしくて愛にあふれてる。
監督が好きな人間像なんだろうな。

結局
見直してみたらば、カンヌパルムドールの
「アンダーグラウンド」が一番おもしろかった。
いろいろしかけがある、という意味でも。
ただDVDで観たこれらの作品を
スクリーンでわざわざ観直す必要があったかは疑問。
そこはあたしはこだわらないし
映像がきれいな映画というわけでもないので。

しかし恵比寿、疲れたな~。
慣れない恵比寿に通っては
いつもすいているトイレとか
三越のかんぴょう巻が閉店間際には
100円安くなることとか
地下のベンチは意外と寒くなくて
こっそりかんぴょう巻をほおばれるとか
コンビニよりドラッグの方がお菓子や食料が充実しているとか
ビール飲むなら恵比寿博物館のテイスティングサロン、
ホットドッグが安くてうまいとか。
そんなことは知ったけど。
およそ恵比寿の街からはのぞまれない侵入者の
あたしでした。
どうだ!ザマーミロ!
もう行かないぞ、一生分行った!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です