月山・蔵王山歩きの旅~①

土曜は。
6時半に起きて
7時チェックアウト。
7時20分発の高速バスのでる
バスターミナルはすぐ近く。
月山は山形と鶴岡の間にあり
アクセスが不便なので
さぞバスは混むであろう、、と
心配したものの
行列だったのは仙台行のバス。
乗るつもりのバス停には
10人前後がぱらぱらと。
その中でもザックを担いでいるのは
約3名。
そっか月山マイナーなのかぁ。
あっという間に町からは抜け出し
刈られる前の稲の黄金色の美しい地域や
高速道路とはいえ
左右ほとんど囲いのない地域といった
のどかな風景の中を行く。
次第にまわりの山はだんだん高くなり
1時間20分で「湯殿山口」に着く。
いろんな方向から
アプローチできる月山。
ここが適度にハードそう、というので
選んだコースなのだけど
とにかくバスの本数が少なく
まずは最初のポイントまで
バスなら5分という距離を
50分かけて歩く予定だったのだが。
歩き始めたあたしたちに
駐車小屋のおじさんが。
「今バス来るから乗っていきな~」
どうやら同じ高速バスを降りた
登山装備のおじいさんたちが
チャーターのような形で
上にある湯殿山神社の「参拝バス」というのを
呼んでいたらしいのだ。
バス停に戻ると
「こんにちは~」と
山の定番の挨拶をかけてくださるおじいさんたちに
「お邪魔させていただきまーす」と言い
ラッキーにも便乗させてもらうことに。
でもまあ500円取られたから
たぶん呼べば来てくれるシステムなのかもしれん。
5分よりはちょい長く乗ったバスからは
青い空と夏っぽい緑の輝きが
目に飛び込んで来る。
ああ、山に来たんだーって。
その先で
さらにバスに乗り換えるのだけど
運転手さんは
「すぐ出るから急いで。
トイレはこの先にあるよ。
今日はどこまで?」
なんて矢継ぎ早に。
あとで思えば
入山届けを出すポイントがなかったから
こういう会話が
まさかの時の
重要記録になったりするのかも。
バスを降りたところで
トイレを借り
いよいよ登山開始。
1050m地点より。
出羽三山を巡る
湯殿山神社が目的の
白装束の人が
何人かいたけど
山に登ろうとするのは
おじいちゃんたちとあたしたちだけ。
なんか本当にマイナーすぎるルート
選んじゃったかな~?
はだしになり
お参りする白装束の人ともわかれ
歩き始めた登山道は
月山というあまりにも有名な名前からは
想像もできない小さな山道。
しかも裏山にちょっと登る、くらいの
軽い傾斜に始まり
「水月光」といって
ちょっとキツイ登り、とされている
苔むした石段も
大したことはない。
ただ照りつける太陽が
暑くて暑くて
次第に汗が玉になって流れ出す。
振り返ると高度は上がっていたようだけど。
ふうふう言いつつも
それほどではないなと
ハイペースで登っていると
次の難関「金月光」と呼ばれる
はしご段の前にたどり着く。
ちょうど逆ルートで
降りてくるおじさん3人組が
ひゃーひゃー言いながら
下り終わるのを待ち
サルのように
さっさか登ってくあたしたち。
このはしご、気が抜けないとか
ガイドブックに書いてあったけど
ちょうどいい前傾姿勢で
石段登るよりずっとずっと楽。
それから少し登ると
「装束場」に到着。
1時間のところ45分で到達。
と、振り返ると
ハイスピードのはずのあたしたちの後ろから
汗だくて走ってくるおじさん一人。
「すいません!ここ頂上ですか!」
聞けば初登山とか言って
軽装で地図も持たず
ハイスピードで変な人。
「頂上まだですけど
この先1時間ゆるやかで
ここに着きますよ」
と、地図を見せてあげる。
そこは湯殿山と
別れる場所で
次の登りまで
しばらくゆるやかな高原のような道が続く。
季節は遅かったけど
花がところどころに残っていて
それまで風が揺らす
葉っぱの音だけだったところに
鳥の声も少し。
ちいさなせせらぎも横切って
少しすると姥ヶ岳を回り込むように
登りが始まる。
と、目の前は開けて
対面に尾根が見え
自分たちの歩く先がそこに
続いているのが遠く見える。
と、そこを歩く人の姿が
はっきりと見えはじめ
あっという間に
次のポイント「金姥」へ到着。
リフトで上がっている道との
合流でもあるため
子供連れの姿なんかも見える。
ちょうど休憩している
人たちがいて
さっきまでほぼ誰にも会わずに登ってきた静けさとは
まったく違う世界に引き戻される。
結構年配な人たちの
団体らしいのだけど
こないだはどこの登っただの
あそこはキツイだのといった
話で盛り上がって
元気一杯だ。
まだまだ勝てない感じだわ・・・
「1班は姥ヶ岳往復してきまーす」
う、姥が姥ヶ岳・・・
恐ろしや恐ろしや。
軽く休憩して
目の前から
絵に描いたような
尾根のまん中に敷かれた石段の道を
登って行く。
見たよりは急ではなかったけど
いよいよ登山らしくなってきたな、という
そんなところか。
それでも尾根なので
左右はひらけ
とにかく景色がすばらしい。
風もあまり強くはなく
どちらかと言えば
逃げ場なく浴びる太陽が熱い。
参拝の山だからから
とにかく道は整備されていて
敷かれた石は見事に平らで
すごく歩きやすい。
この石畳の道がなんだか
日本ぽくなく
まるでスイス?といった
雰囲気を醸していて
気分はヨーロレイヒ~なのだよ。
そんな道を30分ほど行くと
1729mの牛首通過。
ここから1980mの頂上まで
鍛冶月光という最後の登りを
一気にこなすことに。
さすがにこの道はつらく
歩いては休み歩いては休み。
それまで月山なんて
選択はゆるすぎたか?なんて
余裕があったのに
これじゃああの山にもあの山にも
登れないかも・・なんて
不安が一気に襲ってくる。
とはいえ
1時間も登れば
頂上小屋でビール。
という距離だったので
足元の岩ひとつひとつを
全力で踏みしめ
こつこつと登って行く。
この一歩一歩の間に感じる
心模様が登山の醍醐味よなぁと
あたしは思っている。
もちろん登頂した時の達成感もあるけど
こういう一歩ごとの葛藤や闘い、
自分への問いかけ、
そして無になる瞬間。
普段なれない境地に至ることができるのだ。
そんなこと考えるうちに
やった!
登りが終わり
頂上にある月山神社が見える。
宿泊する予定の緑の屋根の小屋を通りすぎ
神社に行くと
お祓いしないと頂上へは行けないというので
500円払って頭を垂れる。
500円かよ!と思ったけど
山の保存や水の確保に、と
言われるとね。
そりゃそーだ。
バイトくん?という雰囲気の
ガタイのいい若いお兄さんが
笑いを交えながらお祓いをしてくださり
神社の中へ。
祭られているのは黄泉の国を司る
月読命(つきよみのみこと)とか。
コージーのこともお願いしといた。
さーてさて。
では小屋へ参りましょう。
数人が食事をされている食堂に入り
カウンターで呼びかけると
あたしの名前を聞き
「ああ」とうなづくおかみ。
早速部屋へ案内してくださるのだが・・・
13時で到着早いとは思ったけど
一番乗り?
荷物を置いて
ビールときのこそばを頂く。
山菜は小屋の主人が取りに行く、とかいう話が
HPに載っていたけど
まさかこのきのこ!!
だってでかいもの。
そしてビールは予想通りアサ○だったけど
登山のあとの頂上ビールは
なんでも美味い!!
満腹になったら
眠くなり部屋へ。
うとうとしていると
まわりにも人が通される様子だけど
なんだか閑散としてる。
で、結局部屋は貸切。
その日泊まったのは
総勢12人だったのでした。
どうやら月山は日帰り登山の山のよう。
たしかに十分往復できるけどね。
だから午後は夕食まで
かなり退屈だったけど
山小屋に泊まって正解でした。
ななんと14時半ごろだったか
突然の雨。
しかもどんどん強くなり
屋根にあたる雨の音がものすごい。
さらに遠くでは雷も鳴っていて
となりの部屋からは
「最後に濡れたよ~」なんて
声も聞こえる。
窓から外を見ると
雨にぬれながら
小屋に走り込んでくる人もいるし
さっき下山した人たちも
どこかでやられてるだろうなぁ。
しかもそのせいか
気温が下がり
汗かいて濡れた服が
冷んやりしてきて
部屋の中にいながらも寒い。
ふとんは寝るまで貸してくれないようだし
お風呂も17時とのこと。
油断してレインスーツの上しか
上着のないあたしは
タオルをかけて縮こまる。
明日足元悪かったらどうしよ。
ってか雨だったらやだな。
と、テンションも下がって
風呂の時間を待って
フロント付近をうろうろしていると
小屋のご主人が
「あ、お風呂入れますよ、
今伝えに行くところでした」と。
実は
食事の時刻も教えてくれないし
風呂も17時ぐらいと
曖昧なことしか教えてくれなくて
もしや不親切な宿?と
疑っているところだったので
そんなわけないか~と
思い直し、安堵。
それにしても
山小屋でお風呂があるっていうのも
すごい話で
なんとこちらはトイレも水洗。
「音姫」まで付いてるし・・・。
あとで雑誌を読んで知ったのだけど
「日本一の山小屋」の自負とのこと。
たしかに。
風呂入って
あったまって
さっぱりした頃
雨もあがり
あれ?外が真っ赤じゃない?
あわててでて行くと
なんと夕日が沈むところで!!
写真を撮る常連らしき人が
「今日はいいよ~
星も見えるね」
と、そこへ小屋のおかみも来て
「あそこの線が日本海なのよ~」って。
実は日本海が見えるのも稀らしく
次の日下山時に会った人と
話をしていたら
「日本海が見えましたか!」と
食いつかれ。
沈んでく夕日と
反射してオレンジに輝く
もくもくした夏の名残みたいな雲は
それはそれは美しく。
「ごはんできてますよ」
と、そのタイミングでの
おかみの言葉もうれしく
食堂にも一番乗り!
と、着席して待っていると
遅れて席に着いた
となりのおじいちゃんが
「お邪魔します」というので
思い出したけど
今朝バスをチャーターした
おじいちゃんたちだったのでした。
あららご無事で。
そして
わかりました、
ここが日本一の山小屋だと言う事を!!
ごはんがすばらしく美味しかったのです
なめこのしょうゆ和え
ふきのとうの白ごま和え
そばの実
ゆば巻き
ふきの煮物
ひらたけの和え物
(これがバツグンに美味かった。
肉か?と思うほどの肉厚、ジューシーさ)
ほうれん草の白和え
月山たけ、かぼちゃ、えび、
なす、ピーマンの天ぷら。
そして天ぷら用の塩がまた美味い。
ビールは我慢して食事に集中して正解だった。
山小屋は言うまでもなく
もしかしたら今まで泊まった
どの旅館よりも美味しかったかも、
ここの食事。
「月山は登らずじまい」なんて言っていた
母をあとで誘ったら
「いくつだと思ってんの、山は無理!」と
ことわられてしまったよ。
こんなご褒美もあるのになぁ。
満腹で部屋に戻ると
娘さんがふとんを運んでくださる。
ここは旅館ですか!
しかもりっぱな毛布には
「高級羊毛毛布」とかいう
仰々しいタグが。
ふとんにくるまりつつ
だらっとして
お腹が落ち着いたころ
暗くなってきたので
ちょっと厚着して外へ。
さすが山の夜は真っ暗
ヘッドランプで足元を照らしながら
小屋から少し離れて空を見上げると
星が!!!
霧がたまに邪魔するけど
隙間から見える空には
きらきら星。
星屑も見えました。
ただコンタクトをあまり強くしていないので
たぶん実際よりは見えていないのは
若干くやしいけど。
でもあとでとなりのおじいちゃんに聞いたところでは
山の夜は霧がでたりして
星が見えることはあまりないのだって。
いやはや
夕日に続き星まで!
まったくミラクルなんだわ、
山の旅。
なんて言いつつ
寝る前にビール1杯で
コテン。
昼寝をしたにも関わらず
21時の消灯前には眠りに落ち
重いふとんが心地よく
気付けば5時半。
ぐっすりの夜なのでした。
明日もいいことありそう・・・
っていうか
あったのだ!
最大のミラクルが!

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