カリスマの弾丸を喜んで受ける

彼女の病は
網膜剥離でした。
そんな人に
文庫本を贈るなんて
大失敗です。
次は
いい音楽でも
送ってあげよう。
それにしても。
あまり重くないらしい、と
彼女は
言うものの
様子見で通院していて
もしかしたら
目を取り出して、という
聞くだに恐ろしい
手術の可能性もあるとか。
失明の恐れもある病だとか。
いくら
「死に至る病」でなくとも
そんな恐ろしい境地なんだ、
彼女は今。
もし
自分だったら
どうなってしまうだろう。
そんなことを
きのうは
いつになく饒舌な
カリスマと語ってました。
でも
もしあたしが
病気になったら
病院に切りにきてくれるって。
そして逆に
手と目が
使えなくならない限り
カリスマが車椅子になっても
切ってもらえるよう
約束も。
カリスマらしい
玉座のようなりっぱな車椅子にすわる
彼の前に
何人も女の子が跪いて
首をたれるわけ。
ふふ。
想像してみると
ちょっとだけ
未来はアカルイ。
きのうの
カリスマの店は
やわらかい冬の日が
さしこんできて
とても気持ちよくて
とても居心地がよくて。
カリスマも
「オレなんで今日は
こんなしゃべってんだ?」と
言っていたけど
お天気と
カリスマのご機嫌と
あたしの気分が
うまくマッチした
すてきな時間で。
ふだんは別室に消える
カラーの待ち時間にさえ
かたわらにいて。
敬虔なクリスチャンの
Cocoちゃんの話に始まり。
客商売って
いろんな人に出会えるねって
とこから
とても気持ちのいい少年と
そうでない少年の話と
その親たちの話へと。
その気持ちのいい少年は
あたしもぜひ
会ってみたい。
すごくやさしい性格で
ゆったりした空間を
自然に作っちゃうような子
なんだって。
それから
たばこをやめたら
太りだして
しかも
口さみしいからって
夜中にドーナツ二つ食べた
自分が許せない、とか。
酔っ払って寝て
Gジャン焼いたこともあるけど
その時死に至らずに
目が覚めたということに
今も感謝してる、とか。
カリスマに渡される雑誌の中で
あたしが
一番気に入ってる
「National Geographic」の
ハチドリのページを
一緒に見たり。
ハチドリ、
あんなに小さな鳥なのに
2割が心臓で
とても強靭らしい。
羽ばたきの速さが有名だけど
それは昆虫に近い
羽を持ってるからなのだって。
カラフルな花にとまる
ハチドリの写真をみて
今度は花の話。
カリスマは
毎年お正月になると
蝋梅(ろうばい」を
店に取り寄せるらしく。
とてもいい香りがするのだって。
今年も見事な枝ぶりの
蝋梅を手に入れたって。
見てみたい。
来年は絶対お正月に
髪切りに行こう。
いい香りに包まれて
何か肖れるかも。
こんなあたしでも。
ほかにも
昔の友達や
車検を通せないほど
短い女たちとの歴史
なんかも。
帰りぎわには
14年も乗っている
1954年式のワーゲンバスに
貼っているシールを
ひとつひとつ
説明してくれたんだけど。
地球にやさしくて
ラヴアンドピースで。
そういうとこで
かっこつけたり
はすに構えたりしない
カリスマって
すごいな~って
あたしもすがすがしい気持ちで
カリスマに手をふって
帰ってきたのでした。
髪がごま塩になってくると
人にも会いたくなくなるし
気分も沈むし
億劫がらずに
がんばって
カリスマのところに
来るようにしよう、と
きのうは思ったのでした。
そのあとは
元町の古着屋や
中華街の雑貨屋を
ふらふらしながら
関内駅へ向かう。
女MJとびっぷと合流。
3月になくなるという
カレーミュージアムへ。
ん~。やはり
普通にうまいと言われている店に
行くべきだったか。
皆でわけて食べたけど
そんなに種類
食べられるわけでもないし。
そのあとは
日本画教室時代の
お友達と先生の展覧会を
見て
コーヒーとモンブランで
珍しく早めに解散。
家帰って
さばをみそ煮にした。
青い魚は
網膜剥離予防にも
いいらしい。

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